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観光DX・マーケティングEXPO 2025(等) 見学

観光DX・マーケティングEXPO 2025 参加レポート

はじめに

7月に開催された「観光DX・マーケティングEXPO」と同時開催の「HR EXPO」を視察してきました。観光DXの分野はまだまだ発展途上であり、今後の成長可能性を感じさせる内容でした。今回の展示会で特に印象に残った製品・サービスを紹介します。

注目の製品・サービス

1. タイムズ24 - 移動式駐車場システム
A lot of cars are parked closely together.

革新的なポイント:

  • 可搬型のキャッシュレス精算機と車番読み取り装置を組み合わせたシステム
  • 通信にはStarlinkを採用し、空が見通せる場所であればどこでも利用可能
  • 花火大会や「おわら風の盆」などのイベント会場での活用が期待できる

ビジネス価値: 車番認識機能により、単なる駐車場管理を超えてデータ活用が可能になる点が画期的です。大規模イベントでは駐車場の一部をキャッシュレス専用にすることで、運用コストを削減しながら来場者の動線データを収集し、次回のイベント設計に活かすことができます。

2. DNPの透明ディスプレイ翻訳サービス


技術特徴:

  • 透明ディスプレイとタブレット翻訳システムを連携
  • 指向性マイクで対面での多言語接客を実現
  • 文意に応じた自動的な文字強調・色替え・フォント変更機能

差別化要因: DNPの製品で特筆すべきは、フォント技術です。AIが文脈を理解して自動的に表示を最適化するため、視認性とメッセージ性が大幅に向上し、質の高いコミュニケーションが実現できます。

3. Remore - イベント管理の新しいカタチ

people holding snifter glasses

キャッチコピー: 「職場の飲み会、現場任せにしていませんか?」

革新的な機能:

  • イベント開催支援と参加者管理システム
  • 飲み会でのハラスメント防止などのリスク管理機能
  • 飲み会の効果測定と主催者のコミュニケーション力可視化

将来性: これは単なるイベント管理ツールを超えて、人事評価の新しい形を提示しているかもしれません。コミュニケーション能力の定量化は、今後の人材管理において重要な要素となる可能性があります。

4. DIP-BOX - 災害時情報インフラ共有サービス

サービス内容:

a satellite in the dark with a black background

  • Starlink、衛星携帯電話、モバイルルーター、スマートフォン、タブレット、ポータブル電源をパッケージ化
  • 基本セットは月額15,000円程度
  • プランによっては一部機器の購入も可能

社会的意義: 情報支援レスキュー隊(IT DART)での活動経験から、被災時の情報インフラの重要性は身に染みて理解しています。Starlinkの登場により、ポータブル電源とStarlinkがあれば情報システムを維持できる時代となり、中規模企業にとって非常に有効なサービスです。

5. remute - 革新的な消音パーティション

驚きの性能:


  • 消音材でできたパーティション
  • ビッグサイトの展示会場の喧騒さえも完全にシャットアウト
  • プライベートな会議環境を瞬時に構築可能

活用可能性: 価格はそれなりにしますが、機密性の高い会議や集中を要する作業環境、Web会議の品質向上に大きく貢献できそうです。

展示会全体の印象と考察

観光DXの展示会に参加してきたのですが、毎回思うのは「なんだかイマイチ盛り上がりに欠けるな」ということ。今回も会場を回りながら、その理由がよく分かった気がします。

観光業界って、中小規模の事業者がメインなんですよね。地元の旅館やペンション、観光施設など、日々の運営で手一杯な現場ばかり。そんな中で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」なんて横文字が出てきても、正直なところ「難しそう」「お金がかかりそう」「自分たちには関係なさそう」って感じてしまうのが実情です。だから、そもそも展示会に足を運ぶモチベーションが生まれにくいし、仮に来場しても出展内容に強く共感することが少ないんです。

さらに問題なのが、展示会の内容が抽象的・専門的になりすぎていること。地域に根差した観光事業者が本当に求めているのは、「予約が増える」「人手不足を補える」「お客様の満足度が上がる」といった、もっと直接的で分かりやすい効果なんです。技術的な仕組みがどうこうより、「これを導入したら、うちの宿はどう変わるの?」「実際にどのくらい効果があるの?」っていうのが知りたいわけです。

ところが、展示会では技術の仕組みを説明するプレゼンが中心になってしまって、導入後の成果や現場での変化がイメージしづらい。結果として、大手の旅行会社やIT企業だけが注目を集めて、地域の小規模事業者や個人で宿を営んでいる人たちが「これは自分たちのための展示会じゃないな」って感じてしまう構造になっているんです。

要するに、観光DXの展示会が盛り上がらないのは、技術と現場の"翻訳"が不十分なことと、展示会が"成功事例の共創"ではなく"サービスの押し売り"に見えてしまう構造に問題があるんだと思います。今後の展示会がより多くの人にとって意味のある場になるためには、「誰の、どんな困りごとを、どう改善したか」という実例と実感をしっかり共有できる構成が必要でしょうね。

そんな背景もあって、今回は結果的にハードウェア関連中心のレポートになってしまいました(これは完全に私の個人的な傾向です)。ただ、Remoreのようなデータ活用の新しい視点を提示するサービスは、本当に印象的でした。こういう「現場の課題を具体的に解決する」アプローチこそ、観光業界に必要なものかもしれません。