公共施設の駐車場について(1)
弊社の本社がある富山市は典型的な地方都市で、多くの住民は移動するのに自家用車を使います。
都会の方には信じられないでしょうが、例えば子どもが部活動で遠征試合に行く際には親が自家用車で送り迎えしなくてはいけません。
これは甘やかしているのではなく、他に交通手段がないのです。郊外の体育館や中学校の場合、バス停があっても半日に1往復しかバスが来ないということも珍しくありません。
少し早起きすれば公共交通で生活できる、というレベルではないのです。
バスの代わりに充実しているのが駐車場です。先に話題にした郊外の体育館には、体育館よりも大きな敷地を使った駐車場が整備されています。
もちろん駐車料金は無料。
体育館に身体を動かしに来るのにその手段が自家用車というのはどうかと思いますが、実際に生活している者の感覚ではおかしくはありません。
郊外に多くの公共施設を抱える富山市ですが、中心部にも体育館があります。
富山駅の北およそ500メートルという立地の良さを生かし、最近ではバスケットボールプロリーグのオールスターゲームが開催されていました。
この体育館には駐車場があり、体育館利用者は2時間まで無料。それ以降は1時間まで320円の基本料金に、30分ごと110円の超過料金がかかります。
おもしろいのは、体育館の周りに民間の駐車場がたくさん整備されていること。
多くの駐車場は近隣のオフィスにフォーカスしたものとなっていますが、2時間以上利用する人にとっては割安になる料金(1時間100円)を設定し、体育館と差別化している駐車場もあります。
体育館という施設はとても魅力的で、それだけで利用者を呼び込むことができます。
体育館の利用料を支払うのですから、駐車料金も払っていいと考える人も多いでしょう。
そして、料金の設定によっては近隣の民間駐車場の利益につながる。
利益につながるから駐車場の整備が進む。
体育館自らが整備できる駐車場は限られていますが、民間の力を使ってより多くの駐車場が整備されるのです。
さらに、民間が儲かれば富山市に税金が支払われ、富山市も儲かる。まさにWin-Winの関係を築くことができます。
さて、富山市総合体育館に隣接して、富山県富岩運河環水公園が整備されています。
とても気持ちの良い公園で、園内にあるスターバックスが2008年の「ストアデザインアワード」で最優秀賞(世界一のスタバ)を受賞したことでも有名です。
残念なのは、この公園の駐車場が無料であること。
周囲には民間の駐車場もなく、お花見のシーズンなどは当然ながら駐車場は満車で渋滞。
せっかく評価の高い公園なのに残念なことです。
公園のKPI(目標とする指標、数値目標)は、来園者数であることが多いでしょう。
そのためには駐車場を無料にして、渋滞を起こすのが最も効率の良い方法なのかもしれません。
ただ、私には経済を活性化し、自治体・民間ともにハッピーになるチャンスを逃しているようにしか見えません。
公共施設を計画・運営する方々には、ぜひ「駐車場」のことを真剣に考えていただきたいと思います。
富山市には駐車場が全くない公共施設があるのですが、それについては別の機会に紹介させていただきます。